店名の「ore=鉱石」や、コンセプト「ありのままでも美しく、形を変えても美しい」を表現したデザイン設計。
中央に独立した壁を立たせた大胆な空間使いは、プライベートサロンだからこそ。
入室した瞬間の視線をあえて遮り、世界観に没入してもらう意図です。
雨上がりの大地のような、光の存在を感じさせる床。
ヘアサロンという場に付随する静かな高揚感を、艶やかさで表現しました。
独立壁の仕上げは、職人の手作業で。
イメージ通りの色や質感にこだわり、幾たびもの試作を重ねました。
浮遊感を持たせた受付カウンター。
非現実的な要素を取り込むことで、シンプルながらも空間全体を同じ世界観で繋げています。
デザインはもちろん、機能性も追求したオリジナルの什器。
大きな窓に即して配置したシャンプースペースには、光を拡散させる白の床材を選択。
流し込むことで、自然なゆらめきも生まれています。
漆喰を施した、側面の壁。
昼の太陽光も夜の照明光も、柔らかく返し、空間を包み込むような魅力があります。
本プロジェクトは、京都・二条通りのヘアサロン「ore」の内装設計である。
サロンの名称「ore」は英語で「鉱石」を意味する。
そこにはクライアントの「ありのままでも美しく、形を変えても美しい」というヘアデザインに対する思いが込められており、このコンセプトを主軸とし、サロンのデザイン設計を固めていった。
まず部屋の中央に1.9メートル×1.7メートルの独立した壁を立て、鉱石のような粗い仕上げを施した。
この壁を立てることで、スタイリングスペースとシャンプースペースを分けながら、空間に奥行きもたせること、窓からの光を遮ることなく部屋の奥まで届けることが期待できる。
次に、側面の壁には漆喰を施した。
この漆喰にはわずかに凹凸があり、光を受けると陰影を生み出しながら優しく空間を包み込む効果がある。
床には白榴石を混ぜたエポキシ樹脂を使用した。
スタイリングスペースでは、既存床を剥がしたときに残った糊の跡を活かすため、透明度の高い濃度で躯体の上から流し込んだ。
それに対し、窓に面したシャンプースペースでは真っ白に調合したエポキシ樹脂を合わせた。
そうすることで、窓からの自然光を強く拡散し、部屋の奥まで届けることができた。
最後に、2つの大理石の塊を点在させ、ほどよい緊張感や空間全体、ひいてはサロンのコンセプトに通ずるテーマ性を引き出した。
空間に散りばめられた些細な美しさを感じ取ってもらい、ゲストに新たな発見をもたらせたとすれば、このサロンの本質に限りなく近い空間づくりができたのではないかと思う。
ore
主要用途 | 美容室 |
構造 | S造 |
施工 | ma plus design |
家具 | BOLTS HARDWARE STORE |
所在地 | 京都府京都市中京区樋之口町461−1 吉村ビル 2F |
竣工 | 2020年 |
写真 | Kohei Yamamoto |